「フェテ・ド・パン」は私たちの創業事業であり、熊本県合志市の小さなベーカリーショップです(2017年7月閉店)。フランス語で“パンのお祭り”を意味する店名のとおり、パン職人として長年の経験を持つ野本安代シェフが焼き上げるたくさんの種類のパンが棚に並び、県内外から多くの方に足をお運びいただきました。忙しく充実した日々でしたが、けっして順風満帆なわけではなく、試行錯誤の毎日でした。そんなある日、私たちは近隣の飲食店から一件の業務用パンのご依頼を受けます。それがグラハムバンズの始まりでした。
飲食店とベーカリーでは、パンの役割が大きく異なります。
食事に合わせるパンは主役の料理を引き立てる名脇役であること――――
つまり、“料理の邪魔をしないこと”が求められます。
とくにグラハムバンズの主要商品であるハンバーガーやホットドッグ用のバンズは、食材との相性がとても重要です。パンだけが目立ち過ぎることなく、食材の良さを最大限に引き出すシンプルな美味しさ。それがバンズの理想の姿です。しかし、ベーカリーの店頭で理想のバンズと出会うのはとても難しいのが現状です。
その理由は、シンプルなパンであるほど高い職人技術と手間ひまが必要となり、業務用パンとしての販売価格に見合わないからです。そのため、パン職人がつくるバンズは簡単に手に入らず、多くの人は大量生産の市販品で妥協するしかありませんでした。しかし、誰が見てもその両者の差は明らかです。飲食店のこだわりに応えられる業務用パンをもっとたくさんの方たちにお届けしたい。そんなパン職人たちの想いがグラハムバンズを支えています。
料理の美味しさは「水」で決まるといわれています。パンづくりにおいても水は品質すべてに作用する重要な原材料のひとつです。私たちが暮らす熊本は、阿蘇山脈の伏流水が流れ込む豊かな自然環境から「水の都」といわれてきました。近年では、国連“生命の水”最優秀賞を受賞するなど、熊本の水は世界的にもその名が知られつつあります。また、日本屈指の農業県である熊本の農業や畜産業は、ミネラル成分たっぷりの豊かな地下水の恩恵を受けて発展しました。
私たちのパンの原材料にも、雄大な阿蘇で育まれた脂肪分3.6%の成分無調整牛乳や、厳選された餌とストレスフリーな環境で生まれ育った緒方エッグファームの「かぐや姫たまご」など、熊本の自然の恵みがたっぷりと使用されています。
パンの主な原材料である小麦粉には店名の由来である「全粒粉(グラハム粉)」をメインに使用しています。全粒粉はお米に例えると“玄米”。九州産の高品質な小麦を丸ごと使用しているため、通常の小麦と比べて栄養素が豊富で、噛むほどに口の中に広がる小麦本来の味わいと香りが大きな特徴です。各商品の特性に合わせて、しっとりとしたグルテンが持ち味のカナダ・アメリカ産の小麦粉をブレンドしさまざまな用途に合わせたバンズを取り揃えています。
パンの口当たりや風味を決定づける油脂は、九州産バターやイタリア産EXバージンオリーブオイルを使用。生地の膨らみや保存性にも作用する重要な原材料であるため、品質や鮮度にはとくに気を使っています。
しっとりした食感を長く保つ作用がある砂糖には、雑味が少ないグラニュー糖を使用。グルテンを引き締める大切な役割を果たす塩には、伝統的な製法でつくられたまろやかな味わいの沖縄の天日塩を使用しています。
(ショートニングやマーガリン、乳化剤は一切使用していません)
私たちがこだわっているのは「食材」だけではありません。いちばん重要な“材”は「人材」。すなわちパン職人の技術です。新工場が完成した今でもフェテ・ド・パン時代からの手づくり精神は変わりません。もちろん、機械をまったく使用しないというわけではありません。異物混入を防ぐ金属探知機をはじめとする、安全性や衛生面を高めるテクノロジーは積極的に活用します。パンづくりにおいても、小麦粉の配合やミキシング、パン生地の成形、発酵や焼成などの重要な工程ではかならずパン職人の“手”と“目”が入るようにしています。それはパンの品質に大きく影響するだけではなく、職人の技術をしっかりと後世に伝えるためにも大切な作業なのです。パンづくりがただの機械作業になってしまわないように、手づくりの精神をこれからも大切にしていきます。
グラハムバンズのパンは食品添加物を最小限に抑えているため、常温での長期保存には不向きです。衛生管理の都合上、すべてのバンズを冷凍状態で出荷しています。焼きたてを急速冷凍してお届けしますので、店舗やご自宅でリベイク(再焼成)していただければ、いつでも焼きたての美味しさを味わえます。お時間に余裕があれば、電子レンジではなく「自然解凍」後のリベイクがおススメです。
最後にひとつ。私たちは品質を追求するため、冷凍パンの在庫を持ちません。ご注文いただいてから作業に取り掛かる受注生産方式を採用しています。効率的な方法ではありませんが、業務用の冷凍パンといえども、パン職人として自信を持って提供するためのこだわりです。ご注文から発送まで多少のお時間を頂戴するため、億実対応などのご注文にはお応えできません。どうぞご理解ください。
グラハムバンズのパンはすべて冷凍状態でお届けしています。その理由は大きく分けて二つあります。まずは「食品添加物を最小限に抑えていること」。そのため常温での長期保存には向かず、衛生管理を徹底するためです。もう一つは「お客さまの使い勝手」を大切にしているからです。焼きたてのパンが一番おいしいのはもちろん当然ですが、おいしさだけを追求すると食品としての取扱いが難しくなってしまうのです
例えば、余っても翌日以降に使いまわせなかったり、在庫として常備することができなかったりと、結果的に大量の食品ロスに繋がってしまいます。『使いたいときに、使いたい分だけ』。それが業務用パンの理想だと思っています。
しかし、けっして焼きたてのおいしさをあきらめたわけではありません。できる限り焼きたてに近い状態でお届けするため、グラハムバンズのパンはすべて、ご注文後に製造に取り掛かる『受注生産方式』を採用しています。けっして効率的な方法ではありませんが、自信を持って提供できる『おいしい焼成冷凍パン』を追求するため、手間ひまを惜しまず、今日もパンを焼き続けています。